Uma visita para o Japao


ユウ(16)…高校一年生
ティキ(24)…歌手

※Tenha cuidado o que o senhor dizの続き。

夏休みも後一週間。学校の自主参加の講習や部活以外はこれと言ったイベントもなく、ユウは退屈な毎日を過ごしていた。
朝起きて母親の代わりに朝食を作り、その後は家事をこなして、昼食、午後になったら買い物へ行って、洗濯物を取り込むまでの間勉強、そして夕食を作り、食後再び勉強と言うのが大体のユウの一日だ。
母親は家事は自分ですると言っていたのだが、共働きで休みのない両親に休みの時くらい楽をさせてやりたいと言うのがユウの考えである。
ちなみに、ティキとのやりとりは当たり前のように続いている。メールは毎日、通話は週に二日程するのが当然で、最初は抵抗があったユウも今では諦めてティキとの通話を自然に感じるようになっていた。
少し前、ユウの誕生日を祝いに行くと言っていたティキだったが、その後のメールや通話ではそのような話題はでていない。恐らくはティキの都合がつかず無理だったのだろう。自身から言った手前、行けなくなったと言えず、だからこそ話題を出していないに違いない。
別に来れなくなったところで落ち込むわけでもないのにとユウは思うのだが、不思議なアピール―まるで異性へのアピールだ―をユウにしてくるティキにとっては、約束を破ってしまうと言うことは一大事なのだろう。正直なところ、その約束もティキが勝手にしているだけでユウはジョークの類としか思っていないのだが。

「…今日は肉の特売日か」

昼食後、皿を片付け終わったると、ユウは部屋から鞄を持ちだして家を出た。夏休み中の日課になっている買い物へ行く為だ。まとめ買いすれば毎日行くこともないのだが、最寄りのスーパーは日によって安い食材が違い、毎日行った方が安く買えるものもあったりする。それに、一人では購入できる量に限度があるという理由もある。
自転車を出し、スーパーへ向かってペダルをこぎ出したところで、上から突然声をかけられた。

「ユウ!」
「あ?」

ブレーキをかけて上を見れば、サチコが部屋の窓から顔を出して手を振っていた。その行動にユウは思いきり眉を顰め、サチコが手を振る窓から下へと目を動かす。勿論、サチコの家の蕎麦屋ではない。幼馴染とは言ってもユウとサチコの家は十分ほど離れており、いくら自転車だと言ってもこんなにすぐサチコの家に就くはずはない。

「どこ行くっちょー?」
「買い物だ。つか、お前人の家の窓から叫ぶなよ」
「や、丁度ユウが見えたから」
「こんにちは、神田」
「…お前の家か」

サチコに続きリナリーが顔を出し、リナリーの家ならばサチコも遠慮しないだろうと納得する。

「用が無いなら行くぞ」
「あ、あるある!後でうち来て!今日家で手打ち蕎麦やってるから、できた蕎麦あげるっちょ。夕食後が確実かも」
「…後でな」

くだらないことだったら断ろうと思っていたユウだったが、蕎麦と聞いて断ることもできず、嬉しさで緩む顔を隠すようにリナリーの家から離れた。









「……何で」

夕食後、家に寛ぐ両親を残してサチコの家―正確には一階の蕎麦屋だが―へとやってきたユウだったが、ユウが所望していた蕎麦を持って来た人物に開いた口がふさがらなくなった。

「やっと来れたんだ」
「………」

二日ほど前、ネット通話で見た顔がユウの目の前にある。それも、ユウがここへやってきた目的である蕎麦を持って。

「…ちょっと良いですか。サチコ」

ティキに蕎麦を持たせたまま、ティキの後からやってきたサチコを店の隅まで引っ張り、首を傾げるティキを置いてこれはいったいどういうことなのかと問い詰める。

「ティキさん、今日日本に着いたんだってー」
「着いたんだってー……じゃねぇよ!何でここにいる?!」
「ほら、おじさん、ティキさんと仲良いっちょ?で、おじさん伝手に連絡とりやすい場所って言ったらここじゃん?二三日泊まりたいって」
「……お前、今日俺のこと呼んだの、蕎麦の為じゃなくて、」
「違うっちょ!それは蕎麦の為!ティキさん…っていうかおじさんから連絡来たのはあの後!おいらも家に戻ってきてから知ったの!」
「本当だろうな?」
「オイラ嘘言ったすぐばれるじゃん」
「……よし」

確かにその通りだ。今のサチコの表情からは言っていることが嘘だとは思えず、サチコは何も知らなかったのだと信じてやることにしてティキを振り返る。

「話終わった?」
「はい」

二人の話が終わるまで律儀に待っていてくれたらしいティキがユウに近寄ってきて蕎麦を渡す。

「これ、取りに来たんだろ?」
「はい。……まさか、ティキさんがいるとは思ってませんでしたけど」
「言ってないしな。びっくりさせたかったんだ」
「ティキサン、日本語めっさ上手くなっててオイラほんとビックリしたっちょ」
「はは、ユウと通話してたから」
「…ほー……ユウの英語の成績は相変わらずだけど」
「五月蠅い」

ティキとの通話は日本語だけだったのだ。ティキの日本語が上達して、ユウの英語の成績が悪いのは当たり前だ。

「今日入れて三泊、ここに泊らせてもらうんだ。ユウはまだ夏休みだろ?会える時間あるよな?」
「…はい」
「じゃあ、明日デートしよう」
「…は?」
「デート。大丈夫、場所はちゃんと調べてきたから」
「…そうですか」

デートとは男女がするものではなかったのかと苦笑いする中、顔を見せていなかったサチコの母親が店に出てきた。

「ユウ君いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「ふふ、驚いたでしょう?私もね、連絡が来た時ビックリしたのよ。リーバーから彼を泊めてくれないかって連絡があって。スターを家に泊めるなんて、ねぇ?ドキドキしちゃうわよね」

サチコの母親の言葉からは、泊められない、泊めたくないという気持ちは伝わらず、二つ返事でティキの宿泊を許可したのだろうと目眩がする。まあ、サチコの性格は両親譲りだとユウの両親が言っているので、納得はできるのだが。

「明日、ティキさんとお出かけするんでしょう?サチコは部活で行けなくて……ユウ君、ティキさんの事お願いね」
「はぁ、」

母親の言葉を聞いて、取り敢えず二人きりで出かける前にサチコが一緒に出かけるという計画あった事にほっとする。

「でも、こんな有名人が外を歩いて大丈夫なのかしら。パパラッチとか」
「平気ですよ。独身だし、悪いことするわけじゃない」
「………」
「あら、そうよねぇ」

サチコの母親は面白そうにくすくすと笑っていたが、ふと何か気付いたのか片手を頬に当ててユウを見た。

「むしろ、パパラッチされてユウ君が芸能界入り、何てことになるかもしれないわね。ユウ君、顔もスタイルもいいし、演技は見たことがないからわからないけど、モデルさんならできそうじゃない?」
「いえ、あの、」
「もしユウ君が芸能界入りしたら、うちのお店のこと紹介してね。著名人のサインを壁いっぱいに飾るのが夢なのよ。ほら、まだティキさんとこの間近くのホールでライブしてた芸人さんのしかないでしょ?」
「…芸能界入りはしないので」
「ふふ、冗談よ」

本気にしないでとサチコの母親は言うが、サチコと違って顔に出ない為本気かどうかの判断がつきにくい。

「ユウ、明日は十時にここに来てくれるか?外で待ってるか――」
「中でいいです。中で」

当初の目的の蕎麦は貰ったし、明日予定ができたからもう帰ろうと三人に挨拶をして店から出ようとすると、ティキがユウの肩にポンと手を置いて呼びとめた。
店の外で待つと言うティキに対し、中で待っているよう強く言って何とか店の中で待つことを約束させる。
ティキのような人物が外に突っ立っていたら、それだけでニュースになってしまう。この辺りの住宅街は外国人が殆どいないのだ。蕎麦屋の前で外国人が立っていると誰かが噂を広めれば、あっという間に蕎麦屋の前に噂話が好きなご婦人がたが集まることだろう。

「それじゃあ、失礼します」
「ああ、また明日」
「…また明日」