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ティキに片付けを任せてリビングへ移動すると、クロスはソファに座り、煙草を吸いながら新聞を読んでいた。

「もう片付けは済んだのか?」
「いえ、ティキさんがやってくれるそうなので」
「成程……」

クロスが顎で自分の隣を指し、ユウはその意図を理解してゆっくりとクロスの隣に腰を下ろす。すると、クロスは新聞を折りたたんでテーブルに放り投げると、ユウの肩に腕をまわして無理矢理ユウの体を己の方へ引き寄せた。

「ちょ、」

あまりに急な行動にバランスがとれず、クロスの腕の中にすっぽりと収まってしまう。口に銜えられたままの煙草が少し怖くて眉間に皺を寄せると、それを察したクロスが煙草を手にとって灰皿に置いた。

「ユウ、お前もうあいつの世話をするな。甘やかしすぎだ」
「甘やかしすぎって、前にも言いましたけど俺は朝声をかけて食事を作っているくらいしか、」
「それが余計なことだと言っている」
「じゃあ、それ以外にどうしろって言うんですか?ティキさんの母親だと言ったのはクロスさんじゃないですか」

朝声をかけていたは、確かにティキの年齢を考えれば余計なことかもしれないが、前に言われた時も考えたように食事は必要なはずだ。それに、ユウの料理は一人分作るのも二人分作るのも手間は一緒。第一、クロスとティキがいる時にユウとクロスの分しか作らなかったら確実にティキを不快にさせる。
ユウの考えていることが分かるのか、クロスは舌打ちをして苛々と頭を掻き、再び煙草に手を出した。

「今度、出張の時はお前も来い」
「その間の家のことは」
「お前が来る前まではあいつもやっていた」
「…それはわかります。風邪の時家事をやってもらいましたから」
「あいつは一人で何でもできるとわかっただろ」

だから、出張について来いというクロスをユウはじっと見、訝しげに眉間に皺を寄せて口を開いた。

「今日はどうしたんですか?クロスさんらしくない」
「俺も常に余裕を持っているわけではないと言うことだ」
「余裕って、」

何を言っているのかわからないと首を傾げると、クロスはく、と笑って灰皿に煙草を押し付け、自分に寄りかからせていたユウの体を抱き上げ立ち上がった。

「え、ちょ、」
「寝室が良いと言ったのはお前だろうが」
「!」

突然抱き上げた意図がわからず困惑していたユウだったが、寝室と言われてすぐにクロスの考えていることを理解し、体を跳ねさせ顔を真っ赤にする。

「こういうのはティキさんが部屋に入ってから、」
「あっちがキッチンにいる間に移動してしまえばいい」

下手に暴れて落とされるのも嫌で口でしか反抗できずにいると、クロスはユウを抱き上げたままリビングを出て、ティキに遭うことなく寝室に入ってしまった。

「わ、」

スプリングのきいたベッドに仰向けに落とされ、思わず声を出す。
両手で体を支えて上体を起こすと、クロスはすでにネクタイを外し、シャツに手をかけていた。

「あ、あの、」
「お前はそのままでいい。脱がせてやる」

シャツのボタンを首元ともう一つだけ外したクロスがベッドで座っていたユウの体を押し倒し、洋服の裾をまくしあげて詰め物をしたブラジャーをずらす。中途半端にずらされた為に、左側の乳首飲みが露出した。

「あの、寒いです」
「どうせこれから熱くなる」
「っ、ふ、」

やはり暖房を付けていなかった部屋は寒く、素肌には部屋の空気が冷たく感じる。
それをクロスに訴えたが、クロスはユウの意見など全く受け入れず外気に晒されたことでツンと主張したユウのピンク色の乳首を舌でつついた。更に舌で濡れた乳首に冷たい息を吹きかけられ、体が震える。

「ん、」
「乳首程度じゃそんなものか」

快感に声が漏れるが、押さえられないほどではない。ぎゅっと目を瞑って乳首への愛撫に耐えていると、クロスの手がユウの股間に触れた。

「ひっ、」

数度服の上から揉まれたが、すぐに下着ごとパンツをおろされ、性器が冷たい空気に触れる。

「ふぁっ、」

空気の冷たさに慣れないうちに更に冷たいクロスの手が掴んで裏筋をなぞり、高めの声が漏れた。そのことに顔を赤らめる暇もなく性器に刺激を与えられ続け、びくびくと体が震える。

「ぁっ、や、それっ、」

カリの部分を弄られながら鈴口に爪を立てられ、痛みと体中を走る快感に身をよじらせる。

「嫌だったら何故硬くなったんだ?気持ち良かったから勃起したんだろうが」
「さ、先、あぁっ、ひぁ!!」
「先がどうした」

止めてほしいと言うつもりがその前にグリッと更に深く爪を立てられ―むしろ先端に指を入れられる勢いだ―大きな声を出してしまう。

「ひ、広が、裂け、」
「これくらいで広がるわけがないだろう。それに、裂けるようなヘマはしねぇ。心配するな」

竿や嚢を刺激され、徐々に先端から透明な液体が零れ出始め、ユウも自分の絶頂が近いことを感じていた。
以前クロスに早いと言われたことがあるが、ユウはクロスが上手いのだと思っている。自慰の時は勃起させるのにも時間がかかるのに、クロスの手にかかると自慰での勃起するまでの時間よりも短い時間でイってしまう。

「イきたいか?」

見栄を張っても仕方がないと素直に頷くと、クロスはユウの性器から手を離してしまった。

「自分だけイく気じゃないだろうな?」

いつもならここで一回射精させてくれるはずのクロスにしては妙なことを言う。

「どうなんだ?」

言わせたい言葉がまるわかりのクロスの問いに対し、ユウはほんの少しだけ無言の抵抗を試みたが、抵抗したところで無駄だとすぐにクロスの望んだ言葉を声にした。

「……一緒にイきたいです」
「よし」

満足げに頷いたクロスがベッドの上で胡坐をかき、己のパンツを寛げて少しだけ勃ち上がった性器を取り出す。中に入れるにはまだ十分でない硬さのソレを見、クロスが何をさせようとしているのか理解した。勃起させろと言うのだ。
ユウは恨めしげにクロスを見たが、このままの状態で辛いのは完全に勃起しているユウの方だ。
四つん這いになってクロスに近づいて胡坐の中心に顔を埋めると、クロスの手がユウの髪を梳いた。

「ん、…む、」

フェラをするのはこれが初めてではないが、何度やってもこの独特な匂いには慣れそうもないとユウは思う。出来ることならば口は遠慮して手でやりたいのだが、手ではいくらやってもクロスを満足させることができないのだから仕方がない。自慰の時ですら自身を勃起させるのに時間がかかるのだから、セックスに慣れたクロスをその手付きで勃起させるなど無理な話なのだ。フェラに関しても決して自信があるわけではないのだが、クロス曰く上手い方らしい。
舌を使って筋をなぞってみたり鈴口を刺激してみたりと、四苦八苦して少しずつクロスの性器が大きく、硬くさせていく。

「もう少しケツをこっちに寄せろ」

銜えるのが辛くなる大きさになり始めると、クロスがユウの臀部を軽く叩く。言われたとおりに体を動かすと、クロスの手がユウの性器を弄り、先走りを指に絡めた。

「力を抜け」
「ん…、」

ゆっくり呼吸して体の力を抜くと、クロスの指が二本ユウの中に入り込んできた。最初から二本も受け入れることができるようになったのはつい最近のことで、それまでは指一本挿れられるのも辛かった。
ぐちゅ、と淫猥な音がユウの耳に入り、ユウの股間に更に熱がこもる。もう射精しそうではあったが、クロスは上手い具合にユウの感じやすいところを避け、射精するには後一歩刺激が足りない。
三本目が入り苦労なく動かせるようになったところでユウの中からクロスの指が抜け、ユウもクロスの性器から離れることを許された。
再び仰向けにされるとクロスが両足の間に割り込み、ユウの腰を掴んで性器の先端を慣らしたユウの肛門に当てる。

「ぁ、ん、」

指とは比べ物にならない太さの性器が少しずつユウの中へと入り込んでいくが、十分にならされた為に辛さはない。

「動くぞ」

根元まで納まったクロスの性器が今度は少しずつ外へと出て行く。腸を引っ張られる感覚にもっと力を抜こうとしたユウだったが、クロスに「緩めるな」と叱られ、泣く泣く力を入れて妙な感覚に身を震わせた。



久々のセックスにぐったりとするユウを尻目に、クロスは隣で悠々と煙草を吸っている。

「濃かったな」

後始末はしていないが寝てしまおうかと目を閉じたユウだったが、クロスの言葉に煩わしげに眼を開けた。

「何がですか」
「お前のコレだ」
「っ、前クロスさんの相手してから何もしてないんだから当たり前じゃないですか」

突然性器を握られて体がビクッと跳ねる。
今日はもう嫌だとクロスに背を向けると、煙草の火を消したクロスがユウの背に覆いかぶさった。

「何ですか、」
「今度の出張の時、お前は家にいていい」
「ついて来いって、」
「それはナシだ」
「……そうですか」

やっぱり今日のクロスはおかしいと思ったが、そのことは指摘せず目を瞑る。だが、すぐにクロスの性的な愛撫によって目を開けさせられた。

「何するんですか!」
「もう一回ヤるぞ」
「もう一回って、クロスさんの一回がどれだけか、」

クロスが一回射精するまでにユウは少なくとも三度射精させられる。もう一度セックスしようものならまた三度射精しなければいけない。流石に日に六度は辛いのだ。

「今日はお前のが出なくなるまでヤらせてもらうぞ」
「え、ふ、ぁっ!」

先程までクロスを受け入れていたせいで緩くなっている肛門に指を入れられ、前立腺を刺激される。
結局、その日は本当にユウの精液が出なくなるまでセックスは続いた。