「少しでも妙な素振りを見せたら、首を刎ねる」

物騒な言葉を、面白そうに王女が言う。
広場から城の王女の私室へと連れて行かれたティキは、ベッドに四肢を繋がれた。

「俺は、確かにお前を殺した。ちゃんと、感触があったのに、」
「ああ、殺された。気持ち良かった」
「っ!」

ティキが槍を突き刺した瞬間を思い出しているのか、王女がうっとりとした表情で心臓のあたりを撫でる。

「思い出してもぞくぞくする。胸を貫かれて、苦痛が全身を駆け巡る……他の奴らには味わえない快感だろうな」

他の奴らなら味わう前に死ぬ。ティキの平たい胸を撫でつつ王女が笑う。その手の動きに性的なものが混じっているのを感じたティキは、頬を伝う汗を拭うこともできず王女に尋ねる。

「お前、俺を飼うって言ったのは、」

ティキの言葉は途中で王女の唇によって塞がれ、さらに口内を舌で蹂躙される。王女とは思えないほど官能的な舌使いに思わず応えてしまいそうになったが、ここで乗っては相手の思う壺だと、歯列を舐める王女の舌を噛み千切った。
驚いて口を離した王女の顔目がけて舌を吐き出すと、ベシャッと王女の頬に当たり、舌はそのまま転げて床に落ちたが、血が王女の頬を汚す。
ティキは王女の怒り狂った反応を楽しみにしていたのだが、王女は冷静に己の頬を撫ぜ、血を拭うと、怒るどころか口の中に堪った血を吐き出して笑みを浮かべた。

「なかなか情熱的な口付けだな」
「…気に入っていただけたようで、どうも」

舌を噛み切ったはずなのに王女の口調はしっかりしている。しかも、その後ティキに見せつけるように出された舌は、完全な形で、傷跡一つなかった。

「ずっと、お前のような奴隷が欲しかった。殺意むき出しで、隙あらば俺を殺そうとするような奴が」
「本当に一国の王女かよ、」

王女の皮を被った悪魔ではないかと思う。ティキや一族が滅ぼしたり襲ってきた国の王女は全て聖女とされており、慎ましやかな乙女ばかりだった。 よく民や王、女王の前で仲間と共に凌辱したものだ。どの王女も恐怖に震え、泣き叫んだが、その惨めさに愛おしさを感じた。
だが、目の前の王女は、ティキより優位に立っているという点があったとしても、刺されて快感を感じたり、舌を噛み切られて笑ったりと、まず人間としておかしな点がある。

「王女?…ああ、そうだな」

王女という言葉に少し首を傾げたが、その後、思い出したように頷き、髪を装飾していたリボンを解いてにこりと笑った。









「ぅ、っ、…はっ、く、っ!」
「なかなかしぶといな。一度楽にさせてやると言ってるのに」

耳元で囁かれ、さらには悪戯に耳を噛まれ、悔しさにティキの顔が歪む。
奇妙だがとりあえずは女であり、年下であるはずの王女にここまで良いようにされているのが、男として情けなく恥ずかしい。
リボンで目を塞がれているので何をされているのか定かではないが、おそらく手でモノを扱かれている。

「目隠し、取れっ」
「取りたきゃ自分で取れ。まあ、取れないだろうけどな?それにも、お前達の大嫌いな物が装飾で編みこまれてるから。この国の所有してる山は、イノセンスの鉱山なんだよ」

目隠しを透過できなかった時点で酷く嫌な予感がしたのだ。先程までの王女の行動から、これから性的な何かを受けることを想像するのは容易だった。しかし、嫌な予感が何を示しているのか気付けなかった為、どんなことをされても能力で乗り切ろうと思っていたのだが………考えが甘かった。

リボン程度にもイノセンスが編みこまれているということは、この国は大量のイノセンスを保有しており、他のものもリボン同様であると考えておかなければならなかったのだ。

先程からティキのモノを弄っている王女の手はざらざらとしており、レース地の手袋か何かをしているようだ。それが原因で、王女の快楽の責め苦から逃れられない。

「ああ、やっと汁が出てきた。そろそろイくか?」
「ふ、ざけんなっ、誰が、お前なんかの手でっ、」
「手が嫌なら、ナカはどうだ?」

王女の手が離れたと思うと、今度はモノ自体にぴったりと何かを被せられる。まともに身動きが取れないままに次の王女の行動を窺っていると、ギシッとベッドが鳴いた後、モノの先端に何かが当たり、ずぶずぶとティキのモノを飲み込み始めた。

(ヤバい…っ!)
「キツ……お前のデカイな、慣らさず全部入れられるか…ん、ぁ……」

徐々にティキのモノを飲み込んでいく何かは熱く、モノに絡みついてひくひくと動いている。王女が嬌声を上げる度に何かがティキのモノを締め付けた。

「はっ、ぁ、あぁっ、ふ、ぅ…」
「や…め、ろっ」
「んん……」

完全に根元まで飲み込まれ、二人の荒い息だけが部屋に響く。

「気持ち、いいか?」
「……最悪だ、」

ティキが吐き捨てるように応えると、王女が不服そうな声を漏らし、ティキの上で動く。それで堪らず声を出すと、王女が忍び笑いしているのを感じた。

「イイくせに」

確かに、気持ちいい。気持ちいいとは思うが、それを受け入れるほど王女に支配されるつもりはなかった。 正直に言っては、何時まで経っても王女優位のままだ。男として、それでは自分が許せない。

暫く、ティキが気持ちいいかと聞いたり、ティキの首筋をなぞったりしていた王女だったが、ティキが何時まで経っても望む言葉を言わなかったので、諦めたらしい。 ティキに話しかけるのをやめ、腰を動かしだした。

歯を食いしばって王女の絶技に耐えるが、ティキが耐えれば耐えるほど王女の行為はエスカレートしていく。王女のくせにやけに慣れた腰付き。ティキのモノを挿入するときにもこれと言って引っかかるものがなかったことを考えると、処女ではないだろう。一体何人の男を銜えこんだのか……
とんだ聖女だ。

「あっ、ぅ…」

何とか声を耐えるティキに対し、王女の口からは淫らな声が漏れ、王女本人が快楽に酔いしれているのがわかる。このままティキが耐えていても、王女一人だけで絶頂に達しそうだ。

そして……

「っ、ぁ……」

王女が体を振るわせ、絶頂に達した。
ティキのモノを引き抜き、王女が息を整える。衣が擦れる音がした後、目隠しを外された。ようやく自由になった目を動かすと、己の情けないくらい勃起したモノと、ベッドの縁に座って恨めしげにそれを見ている、衣服をしっかりと整えた王女の姿が目に入った。

「イかなかったな…」
「いっ……!」

どうしてもティキが射精しなかったことが気に入らないらしく、王女がギュッとティキのモノを握る。激痛に顔を顰めると、ふん、と声をもらした後、王女は手を離し、ティキに首輪をつけてそれを壁の鎖と繋げた後、ティキの枷をベッドに繋ぐ鎖を外した。

「自分で処理したらどうだ」

そう言い残して王女が隣の部屋へと消える。暫くするとちゃぷ…と水の音がしたので、どうやら隣は浴場になっているらしい。

逃げられないかと鎖を弄ってみたが、やはりというべきか、首輪にもイノセンスが使われているようで通り抜けられなかった。